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響け!ユーフォニアム3期の改変と感想~やはり納得できない~

響け!ユーフォニアム3期の改変と感想~やはり納得できない~

響け!ユーフォニアムがアニメで完結したタイミングで1期から視聴し、映画など含めようやくすべての視聴が終わりました。

原作未読でSNSなどの口コミやネタバレも見ずに視聴したため、途中どういった変更があったのか詳しく分からないものの、3期の結末だけはどうしても納得がいかず、気持ちを落ち着かせるためにも感想をまとめていくことにしました。

※見返すと読みにくかった部分もあり、2024年9月22日に修正しています。

目次

納得できないストーリーと視聴後に知った改変

放送当時も大きな反響があったようですが、主人公の黄前久美子がソリのオーディションで落選したことがどうしても納得いきませんでした。

物語の終わり方として、キレイなものを期待していた部分はもちろんありますが、ただそれが叶わないだけではこんな思いになることもなく、こうしたブログを書こうという気にもなりませんでした。

しかし3期を通して思うことは、作り手がやりたいことを実現するためにキャラクターが動かされていたということであり「こういうリアリティのある展開、1期や2期のセルフオマージュが好きでしょ?」という意図が透けて見えたのがとても残念でした。

どうしても納得がいかなかったので、原作の3年生編を読むことでなんとか気持ちをおちつかせましたが、あらためて3期の感想についてまとめていきます。

3期だけでみると違和感のないストーリー

前提として整理しておきたいこととして、響け!ユーフォニアムの3期は3期だけを切り取ってみると普通のアニメとしてみることができるということです。(その場合、ここまでのめり込むことはありませんでしたが、、、)

久美子が部活に熱中する高校生や奏者として描かれることは少なく、部長としてチームをまとめる難しさに苦悩していく描写が多くありました。結果的に、思い描いていたソリを吹くことは叶わないものの、全力で吹奏楽部と向き合いまとめることで目標としていた全国大会金賞を獲得でき、人としては大きく成長することができたと思います。

それぞれの行動にもそれなりの理由付けがなされたため、このように捉えても違和感はあまりありません。吹奏楽部のアニメなのに音楽シーンがほぼないことも、こういう見方をするとそこまで気にならないのではないでしょうか?

しかし、響け!ユーフォニアムは久美子が1年生のころから始まった物語であり、各キャラクターの人物像がしっかりと深掘りされているため、3期の改変はどうしても納得できないものとなっています。キャラクターの動きに対する違和感は後ほど詳しく記載しますが、まずはストーリーについて深ぼってみます。

そもそも細かいことは抜きで久美子がソリで問題なかった

まず創作物の王道として、強力なライバル(黒江さん)が出現→最初は何とかうまくいく(府大会のオーディションに勝つ)→負けて挫折する(地区大会のオーディションで負ける)→成長して最後に勝つ(全国大会のオーディションに勝ち金賞)という流れが存在する以上、細かいことを抜きにしても久美子が勝つことに納得しない人はほとんどいないはずです。

加えて、3期だけでみると黒江さんが選ばれることに違和感はないと話しましたが、それは久美子が勝っても同じで違和感ありませんでした。

たしかに黒江さんに負けてしまうかもしれないという演出はありましたが、地区大会のオーディションに負けたことで十分に回収できており、地区大会直前~全国大会のオーディションにかけて描かれた変化を見ても、久美子が勝っても納得しない人は少なかったように思います。

そのくらい、久美子と黒江さんはどちらが勝ってもおかしくないような展開で物語が進んでいました。もう少し深掘りしてみていきます。

久美子が勝って問題なかった理由

「久美子と黒江さんの実力はほぼ同じ」という表現は作中で共通しており、上手いとされる主要人物の全員がどちらをソリに選ぶか甲乙つけがたいという評価であり、最後は好みの問題であるという点まで共通していました。その上で「僅かな違いは必ずあるため先生が良いと思う方を決めるべきと考える人」と「全体の演奏を考えて久美子にすべきと考える人」に分かれていました。

つまり、ストーリー的にはもちろん主要キャラクターの評価的にも、久美子が勝つことに違和感を覚えることはないはずです。

加えて、地区大会のオーディション直前の高坂さん(麗奈)は「黒江さんは上手いというより勘がいい。指揮者の欲しい音が出せる」という表現しており、演奏技術の差はないことが明示されています。また久美子に対しては「先生からの指摘が多くなっている」と不安を覗かせていますが、これは滝先生の評価は黒江さんの方が上かもしれないという暗示であり、地区大会のオーディションでソリ落ちする伏線ととらえることができます。

実際、この頃の久美子は「進路」「黒江さん」「吹奏楽部の空気」という軽くない問題を3つも抱えており、多くの人が気がづかないものの滝先生や高坂さんのような上位層には感じられるちょっとしたズレやミスが増えていたとしても不思議ではありません。そのため、この発言や懸念は地区大会のオーディション落ちに向けた自然な演出に感じられました。

ただ、その後はOGのあすかさん(田中あすか)を訪ねることで部内の空気の問題を解決し、進路については滝先生と話すことで自ら気づき解消。最も難しかった黒江さんの問題も奏ちゃんと話すことで1回目のオーディション前後には整理でき、2回目のオーディション直前には黒江さんの不安を取り除けるまで消化できました。

そのため、全国大会のソリに久美子が選ばれたとしても、それまでのストーリーと矛盾することはなかったと思います。

3期の改変が納得できない理由はキャラクターの私物化

何よりも納得できないことは、久美子がソリのオーディションで落ちるという衝撃のラストに向けて、各キャラクターの個性が捻じ曲げられ、通常だと考えられない行動をさせられている点です。

ここからは、特に納得できないキャラクターの変化についてまとめていきます。

・滝先生
・高坂麗奈
・吹奏楽部の部員全体

滝先生が役割を放棄した

3期の問題を引き起こしている原因が、滝先生の役割放棄です。

黒江さんを勝たせるにしても、滝先生が黒江さんを選びそれなりの理由付けや意味を持たせていけば、ここまでの不満はなかったと思います。

これまでの滝先生は、教師として未熟な部分があるものの吹奏楽部の顧問としては物凄く優秀であり、自分や生徒に対して正しさや責任感を求める人物でした。だからこそ、弱小の北宇治高校が全国大会出場を果たすことができましたし、急激な環境変化による反発よりも尊敬が上回ったことで、簡単には崩れない組織になっていたと思います。

それなのに、セルフオマージュをするために、感動的で衝撃的なシーンを作るために、滝先生の個性や魅力が削がれてしまいました。最も重要な全国大会で金賞を取るためのメンバー選考、部長で功労者の久美子にソリを任せるかどうかという判断を下せず、全体投票というそれっぽい逃げを使って役割を放棄してしまいます。

当人はともかく、高坂さんや緑ちゃん(サファイア)のような耳も演奏技術も高い上位陣は落胆しなかったのか不思議でした。特に高坂さんは、ショックが大きかったはずです。

これでは、生徒の間で疑問が出ていた「滝先生はブレている」「ついていって大丈夫なのか不安」という悪い予想が的中していたことになり、滝先生のすごさや魅力が一気になくなってしまいました。

これまで描かれてきた滝先生には、自分が嫌われ者になっても実力主義を押し通し、感情ではなく技術と全体の完成度だけを追い求めてる強さがありました。加えて、誰よりも早く出勤し誰よりも遅く退勤することで時間を捻出し、全国大会を目指すと決めて頑張っている生徒の期待に応えるようとする熱量がありました。

個人的な理由もあったかもしれませんが、それだけでできるような、簡単に真似できるようなことではなかったことを視聴者も十分に理解できていたと思います。だからこそ、未熟な部分があったとしても生徒が憧れ尊敬できる先生だったと思います。

それが、最後の最後に台無しとなり、久美子が憧れる意味も分からなくなってしまいました。

ちなみに、高坂さんと香織先輩の公開オーディションのセルフオマージュのように見えますが、まったく違うと考えています。あの時は滝先生が高坂さんをソロに選んでおり、部内の納得できない空気を変える力がなかっために公開オーディションという手段がとられただけであり、滝先生は完璧ではなく未熟でもあるという表現の意味のあるシーンだったと思います。

高坂さんは何がしたかったのか分からない

高坂さんについては最も被害にあったキャラクターであり、3期をみて嫌いになった人も増えたのではないでしょうか?

高坂さんの問題点は大きく4つあります。

①.統一感のない評価と行動

結局、どのタイミングで久美子より黒江さんの方が上だと判断したのか分かりません。

仮に、オーディションの演奏で黒江さんの方が上手いと思ったのであれば、地区大会前のオーディションで言っていた「うまいというより勘がいい。」というセリフから、黒江さんが高坂さんの欲しい音を表現できたからという理由が濃厚だと思います(そもそも、演奏の精度が上がる地区大会本番でペアを組んでいますし)。

そうだと仮定すると演奏技術には差がないことになり、親友であり特別と認め合っている関係の久美子となら、全国大会までにはより素晴らしい演奏を生み出すことができたはずです。

仮に、弾きやすさではなく技術面をみてオーディション時点だと黒江さんの方が上手いと感じたとしても、滝先生が実力に差がないと判断している以上、同じ理由から全国大会での完成度を見据えると久美子を選んだ方が良いものになったと思います。

また、それ以前から実は黒江さんの方が上手いと思っていた場合、かなり多くのシーンで矛盾が出てしまいます。主な部分を抜き出すと、地区大会のオーディション前後と1回目の全国大会のオーディション前後になると思いますので、この2つを抜粋して考えてみます。

地区大会のオーディション前後に思っていたのであれば、練習に協力するなり直接的な表現で久美子に発破をかけるのが高坂さんらしさです。例えば、地区大会のオーディション前に「私なら久美子ではなく黒江さんをソリに選ぶ」と発言したり、オーディション後に「このままだと全国でも黒江さんになるからなんとかして(一緒に練習しよう)」など言いそうなものです。

しかし実際は「上手いというより勘がいい」と言っただけであり、これが本心でないのであれば気を使ってぼかした表現にしたことになり、性格的に考えにくいです。

次に1回目の全国大会のオーディション前後であった場合は、滝先生より優れた耳を持っていたことになってしまいますし、2回目のオーディション前後であった場合は、駅でのやり取りが嘘になってしまいます。

②.実力主義は全国大会で金賞を取ることでは?

(吹奏楽については素人のため間違った解釈かもしれませんが、)チームスポーツのような団体競技では純粋にスキルの高い人から選考されることは稀で、チームとしての強さも選考の大きな理由になると思います。作中でも、チューバは一人一人の実力が低く少し物足りないため、全体最適を狙って人数を増やしたと捉えられる表現がありました。

この前提に立つと、好みでしか実力差を判断できない状況であれば、部長としてこれまで部に貢献してきておりおそらく多くの人に尊敬されている久美子と、その親友で圧倒的な実力を持ったドラムメジャーの高坂さんの2人でソリを吹いた方が、全体に与える影響を加味するとプラスに働くはずです。

そんな状況にも関わらず、あえて火種となりかねない黒江さんを選ぶ意味がわかりません。実際、黒江さんが選ばれた時の空気は酷いものでした。あの時、久美子が全員を鼓舞できたから何とかなりましたが、もし泣きだしてしまったら全国金は絶望的だったと思います。

ですので、全国大会で金賞を取るためだとしても黒江さんを選ぶメリットがありませんでした。

また、確実に黒江さんの方が上手だったとすれば、滝先生は役割放棄どころか実力主義を放棄し感情で判断してしまったことになります。加えると、久美子に投票した塚本や緑ちゃん、奏ちゃんは感情で久美子を選んだことになり、3年間作り上げてきた実力主義を放棄したことになってしまいます。

少し脱線しますが、仮に久美子と黒江さんの音を部員全員が分かったとして、全国大会トップを目指す強豪校であればどちらが有利になるという事はないはずです。

2人の実力が同じである以上、久美子が上手いと思っても「情で選んでしまってないか?」と不安になりますし、黒江さんが上手いと思っても「情で選ばないようにしているだけでは?」と不安になります。結局、滝先生で判断できないレベルの違いという事は絶対の自信を持って選べる人はいませんし、忖度で選んでしまうようなメンバーなら全国金賞は無理だったはずです。

③.「久美子とソリを吹くって決めてる」はなんだったのか

高坂さんの発言の変化は久美子の負けフラグになっており、3期のストーリー的に仕方のないものだったかもしれません。しかし、そもそも高坂麗奈という人物は演奏に嘘をつけず、自分の気持ちや勝ちたいという思いを何より大事にする人だったはずです。

そんな人が「(黒江さんの方が上手いから無理だと思うけど)私は久美子と吹くって決めてる」と何度も言うことはあり得ないはずです。高坂さんの性格を考えると、実力を出せれば久美子がソリに相応しいと確信を持っていると考えることが普通であり、建前で発言しているとは考えにくいです。

「気持ちでは久美子と吹きたいと思っている。でも黒江さんの方が上手いと薄々気づいており葛藤があった。」と解釈することもできますが、前述した性格を考えると久美子に特訓や発破をかけるようなこともしなかったことと矛盾してしまいます。

④.滝先生への尊敬や信頼はなんだったのか

「滝先生に抱いている恋心が盲信につながっているのだ」といわれるとそれまでではありますが、人柄だけでなく音楽的な才能や人として正しくあろうとする姿は、高坂さんが滝先生を慕っている重要な要素だと思います。

そんな滝先生がオーディションでソリを決めきれず「実力差はないため公開オーデションにします」と判断を下した時、高坂さんは滝先生が決めるべきと進言しても良かったのではないでしょうか?

そもそも高坂さんは、部の空気を壊すことに躊躇がなく部長や部員に対して「先生を信じきれないなんてありえない」という態度を貫いてきました。それには指揮者を信頼すべきという正論もあったと思いますが、それ以上に滝先生の目や耳に対して絶対の信頼や信用があり、全国大会で金賞を取るためには滝先生の判断が絶対だと信念を持っていたからだと思います。

その行動から考えると、久美子たちが1年生の時に松本先生(軍曹先生)が滝先生にしたように、今度は高坂さんが滝先生に自分の判断を信じるよう後押しすることがあっても良かったのではないでしょうか?

ちなみに原作にはなりますが、素人も混ざっている部員による公開オーディションという形を高坂さんは全否定していました。やはり、高坂麗奈という人物から考えると、その方が自然に感じます。

仮に公開オーディションすらも滝先生の判断であれば正しいと考えたとしても、久美子と黒江さんの違いを実力で判断することにも違和感があります。どちらかというと「滝先生ですら実力に違いを見いだせない2人を実力で判断して良いわけがない。だからこそ思いの部分で考えて、最も金賞に近づけると思う人を選ぶ」という思考の方が納得できます。

違和感のない思考を無理やり考えると「滝先生は情に流されて黒江さんを選びきれないでいる。だから私が選ぶんだ」や「私には滝先生には分からない2人の実力差がはっきりわかる」が挙げられますが、この時点で尊敬していた滝先生はいなくなってしまうと思います。

部員たちは何だったのか

地区予選のオーディション後に部内が荒れたのは何だったんでしょうか?

もし黒江さんの方が上手かったのであれば、それこそ実力主義が体現されており先生の判断に納得する声が多かったはずです。そうなると、全国大会を目指す部内の空気が悪くなるというのは考えられません。

つまり、そうならなかったという事は久美子と黒江さんの実力差はないと考えていた部員が多かったということであり、スキルに差ががないのであれば久美子が吹くべきと思っていた人が一定数いた、ということになります。

作中でも実力のある奏ちゃんが「2人にはほとんど差はない。府大会から地区大会に向けて、2人の成長に差があったとも思えない。」という発言をしていることから「黒江さん派=滝先生が決めたことに従う派」と「差がないなら久美子が吹くべき派」で論争があったと考えられます。

そうであるなら、問題の火種となっているのは「差がないなら久美子が吹くべき派」の部員たちとなりますが、この前提にあるのは実力主義を許容するものであり、同じ楽器を吹く人同士の空気が悪くなることはあっても部全体の雰囲気が最悪になるようなことはあまり考えられません。

このことから滝先生とその先生を盲信して見える高坂さんへの不信感によって、部内の空気が悪くなっていたと考えられます。ただ、この2人への疑念が消えるような話は最後までなく、むしろ悪化してもおかしくない公開オーディションがあったにもかかわらず、久美子が動いたことで地区大会でも全国大会でも一致団結してしまいました。

どちらも「久美子部長のために」という思いが働いたと考えられなくもないですが、そうなるとオーディションの結果やそれに至るまでの変化もよく分からないものとなり(その想いがあるならそもそも部内の空気は最悪にならないはず)、心理描写として違和感がでてしまいます。

ですので個人的に思ったことは、久美子部長に苦労をさせ、高坂さんや塚本たちを揉めさせるために動かされたモブというものでした。1期や2期、映画ではこうしたことはあまり感じなかったために、ここもすごく残念に思ったポイントです。

少し話は逸れますが、今回の結末にするのであれば久美子と関わりの薄い2年生や入学したての1年生をもう少しうまく使っても良かったと思います。

例えば「黒江先輩がソリを吹くべき」「部長も上手いけど黒江さんの方が上手いと思う」といった発言を久美子がいないところでさせていれば、久美子のソリ落ちに納得感も出せますし、「そもそも黒江さんの方が上手い」と考えているグループもいたことになり、部内の空気が悪くなった理由に厚みも持たせられます。

どう考えてもソリ部分は改悪だった

キャラクターの個性がなくなってしまったことにフォーカスしていろいろと思いを書いてきましたが、結局は黒江さんが勝つことに納得できる理由がなかったことが辛かったです。

どうしても描きたいことがあり各キャラクターの個性や性格を曲げたというのであればまだ納得しようもありますが、最後までみて思ったことは、リアリティや感動的で泣けるようなシーンを作り、12話のインパクトを出すための演出でしかなかったということです。

大好きだった響け!ユーフォニアムというアニメが、一瞬の盛り上がりのためだけに改悪されてしまったことが、本当に悲しかったです。

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この記事を書いた人

僕が気になって読んだ・見た作品のあらすじや感想をネタバレ有で紹介していきます。完全なインドア派で、暇があればいろんな作品を見たり読んだりしています。

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