今回は『賢者の書』のあらすじや見どころをご紹介していきます。後半では、本書を読んだ感想や僕なりに思ったことについても話していきます。
本作はネタバレしているかどうかは関係なく、本を読んで得られる考え方や価値観が重要ですので、あまり気にしなくて大丈夫な気もしますが、感想パートは若干のネタバレが含まれるのでご注意ください。
賢者の書は自己啓発本でありながら、読み終えた後に猛烈にやる気がみなぎるようなことはなく、自分を見つめなおすきっかけを与えてくれるような本です。文体自体は読みやすいので、すんなりと話を聞くことができます。
賢者の書のあらすじが分かる
見どころや登場人物を知ることができる
感想や考察を楽しめる
作者や発刊年などの基本情報が整理されている
賢者の書のあらすじと見どころ
まずは、賢者の書のあらすじや見どころをご紹介していきます。
- あらすじ
- 賢者と少年と対話できる本
- 主な登場人物は2人
あらすじ
14歳の誕生日を迎える朝。おじいさんから特別なプレゼントがある、と告げられた少年は”賢者の書”という何も書いてない不思議な本を受け取る。
その本には、少年の思考や経験が記されるようになっている。
記される内容はただの日記ではなく、賢者から話を聞き、自分なりに解釈し、賢者に認められた時、賢者の教えや少年の理解した内容が記される。
少年は賢者の書を完成させ、自身が賢者になるべく、9人の賢者の話を聞く旅にでかける。
もう一人の主人公である男性は、そんな少年にとある公園で出会う。そこは、男性が14歳から3年間過ごした町の公園であり、人生を見つめなおすきっかけを求めて立ち寄った場所であった。
男性と一緒に少年の旅を追体験しつつ、少年や賢者の書の行く末を見守ることに。
賢者と少年と対話できる本
この本の一番の魅力は、賢者の話す言葉と、それを受け取った少年の成長を追体験できるところですが、自分もその場に参加して対話しているような気分になります。
本とは作者との対話、という例えはよく聞きますが、この本はまさにそうした感覚を得ることができます。
もちろん賢者から語られる話も素晴らしく、新たな気付きを得られます。
よくある自己啓発本では、どこかで聞いたことがあるような話がまとめられているだけ、と感じるものも多いのではないでしょうか?特に近年は、SNSやYOUTUBEなどが発展し、偉人の名言や成功する考え方に触れる機会が多く、新しい気付きはなかなか得られなくなっています。
賢者の書でも、聞いたような話が多く出てきますが、そこからの深掘りが素晴らしいものになっています。というのも、1冊かけて伝えられる教えは約9つです。つまり、1つ1つの教えに相当なページ数を割いており、さまざまな考え方ができるように構成されています。
この考え方が正しい、こうあるべきだという押しつけがましいものではなく、その教えについてフラットな気持ちで考えてみようというスタンスになっているため、新しい価値観や気付きを得られやすくなっています。
また、賢者の話は章の終わりに1ページでまとめられているので、あとから振り返る時や、再度考える時に分かりやすい作りになっています。
主な登場人物は2人
サイード
サイードは、素直で前向きな性格の14歳の少年です。
14歳になる誕生日におじいさんから賢者の書を受け取り、賢者になる旅に出かけます。9人の賢者に話を聞き、賢者の書となるその本を完成させます。
アレックス
アレックスは2人の子供と妻の4人で暮らす、普通のサラリーマンです。
社長の代替わりで会社での居場所がなくなり、子供たちとの会話はあまりなく、奥さんとの関係も冷めており、うだつの上がらない日々を過ごしています。
ある日、自分と向き合うために14歳から3年間住んでいた街を訪れます。
9人の賢者
賢者は世界各地に散らばっています。
1人1つのピースを持っており、サイードが賢者の話を理解できたと判断するとピースを渡します。
賢者の書の感想と気づき
ここからは、実際に賢者の書を読んだ感想と各教えで感じたことを整理していきます。
- パズルのピースという設定が秀逸
- 教えは大きく3つに分けられる
- 教え①:良い結果も悪い結果も今必要なもの
- 教え②:人間の可能性は無限大である
- 教え③:自尊心と他尊心の高さと両立を
- 教え④:何にではなくどんな人間になるかが大事
- 教え⑤:伝記を作るつもりで今の行動を重視する
- 教え⑥:必ず帰ってくる投資は時間の投資
- 教え⑦:自分ではなく他人の幸せのために動く
- 教え⑧:口に出すものだけでなく頭の中で使う言葉を大切に
- 教え⑨:感謝の気持ちを忘れない
- 教え⑩:らうのではなく与える気持ちで考える
- 教え⑪:人はいつでも生まれ変わることができる
パズルのピースという設定が秀逸
個人的には、”パズルのピース”という設定が抜群に良かったと思います。同じような言葉で腑に落ちない感覚がったものでも、1つのピースと言われるとすんなり受け入れられました。
例えば、行動して得られる結果は、一枚の絵を完成させるために必要なパズルのペースであるという教えは、近しい言葉として次のようなものが思い浮かびます。
- 神様は乗り越えられる試練しか与えない
- 止まない雨はない、明けない夜はない
- すべてのことには意味がある
きれいごとにも思えるこれらの言葉ですが、パズルのピースだと言われると納得感が出てきます。
パズルをやったことがあれば、1ピースだと何を表しているのか、どこで使うのか全く分からない、という感覚は理解できますし、全て揃って1枚の絵になることも当然の感覚としてあります。
その前提があるからこそ、パズルのピースに気づかず捨ててしまうと、大いなる力は何度でも同じピース渡してくれるという話がポジティブに感じられ、自分がきっかけで起こる同じような不幸や失敗は悪いものではなく、同じピースを受け取るチャンスは何度もやってくると捉えることができます。
こうした前提があるからこそ、あまり納得できない教えがあったとしても、とりあえず受け入れて考えてみようという気持ちにさせてくれます。
ちなみに、賢者の書を通して今の僕に最も刺さった教えは他尊心でした。何かに一生懸命取り組む際、僕はどうしても自分中心に物事を考えてしまいがちで、他者を思いやる余裕がなくなってしまいます。
そしてうまくいかない時は、自己嫌悪が強くなり、他人の振る舞いに対する許容度も下がってしまう自覚があります。
逆を言えば、他人を尊敬する気持ちを常に意識し、自分に集中しすぎない方が、結果として人生を豊かにするかもしれないと、思えました。そういった意味では、他人を幸せにすることを考えて行動する、という教えにも強く考えさせられました。
教えは大きく5つに分けられる
それぞれの教えをカテゴライズすると、次のように5つにわけることができます。
カテゴリ | 教え |
結果や行動への考え方 | 教え①:良い結果も悪い結果も今必要なもの 教え②:人間の可能性は無限大である |
自分や他人との向き合い方 | 教え③:自尊心と他尊心の高さと両立を 教え④:何にではなくどんな人間になるかが大事 |
目標への頑張り方 | 教え⑤:伝記を作るつもりで今の行動を重視する 教え⑥:必ず帰ってくる投資は時間の投資 |
日々の過ごし方 | 教え⑦:自分ではなく他人の幸せのために動く 教え⑧:口に出すものだけでなく頭の中で使う言葉を大切に |
今との向き合い方 | 教え⑨:感謝の気持ちを忘れない 教え⑩:らうのではなく与える気持ちで考える 教え⑪:人はいつでも生まれ変わることができる |
そして、個人的にこれらの教えは連なりがあり、循環されているように感じます。

それぞれの教えについて、少し深掘りつつ感想を書いていきます。
教え1:良い結果も悪い結果も今必要なもの
・行動の結果として我々が手に入れるものは、成功でもなければ、失敗でもない
・我々が手にするものは、一枚の絵を完成させるために必要不可欠な、パズルのひとピースにすぎない
賢者の書の基本であり、最も根本的な考え方を1人目の賢者から学びます。物語の中では、宇宙が描かれた1万ピースのパズルを使って説明されます。
1万ピースの中には、ひとピースでどのような絵かイメージできるものと、まったくイメージができないものがあるものの、すべてのピースがパズルを完成させるために必要不可欠だと分かります。
仕事の癖でもありますが、行動した結果、成功したのか・失敗したのかという見方をしてしまいがちですが、人生を豊かにするという観点で見ると、そこに固執しすぎない方が良いのかもしれません。
ただ、全く考えないと成長もないと思うので、バランスが大事なんだろうなと現時点では感じています。
教え②:人間の可能性は無限大である
・人間には無限の可能性がある
2人目の賢者からは「大いなる力=宇宙の力=心の力」と教えてもらえます。
賢者の書において大いなる力とは創造主の力とされており、この宇宙や世界を創造した力と同じものを全ての人が持っていると伝えられます。
これは目から鱗と言いますか、これまで考えたこともない話でした。心の持ち方や意思を強く持つ、という感覚はありましたが、心の力の大きさという視点はありませんでした。思いの強さみたいなものと通ずるところがあるかもしれません。
教え③:自尊心と他尊心の高さと両立を
・自分がかけがえのない存在であり、無限の可能性を持った唯一無二の存在であると、絶えず自らに言い聞かせる必要がある
・自尊心と同じ高さにまで、他尊心も高めている必要がある
3人目の賢者からは、自分自身の可能性を信じ存在そのものが尊いものであると伝えられます。ここで勘違いしてはいけないことは、自分だけが特別だと考えてしまうことです。自分が特別で無限の可能性を秘めているように、他者も特別で無限の可能性があります。
自分を卑下してしまうと他人の価値も下げて考えてしまうため、他人を尊敬し思いやる心を高め、それと同じものを自分自身に向けると、好循環になるような気がしました。
教え④:何にではなくどんな人間になるかが大事
・これになれたら成功、幸せなどという職業は存在しない
・成功は職業についてくるものではなく、人についてくるものだからだ
4人目の賢者からは、どんな人間になるのか、どんな人間を目指していくのかを考えることを忘れてはならないと伝えられます。
これは、就活の時に一番意識したことであり、今も定期的に考えるようにしています。自分にとってどんな状態が理想なのか、その状態を目指し維持するにはどうすべきかを考えるようにしています。
教え⑤:伝記を作るつもりで今の行動を重視する
・今何を持っているいないに関係なく、今日一日、成功者としてふさわしい過ごし方をするだけだ
5人目の賢者からは、成功者の共通点として日々の過ごし方を伝えられます。成功者の伝記を例に、こういう経験をしたから後の成功につながるのか、こんな日々を過ごしていたら成功するに違いない、と思わせることがよくあると説明がなされます。
これは身の引き締まる教えでした。結果が出ない時はモチベーションが下がったり、邪道な方法が頭をよぎることがありますが、客観的にその状態を見て、成功しそうな行動が取れているのか?を考え続けることの大切さが説かれている気がします。
仕事では飛び道具のような方法もありな時もありますが、その行動に自信を持てるかどうかは、すごく重要な要素だと思います。
教え⑥:必ず帰ってくる投資は時間の投資
・無一文からスタートして巨万の富を築き上げている。彼らは皆、投資をしたからこそ成功を手にすることができたのだ
・自らの人生という貴重な財産を、時間という財産を投資したのだ
6人の賢者からは、時間を投資することの大切さを教わります。
世の中一般に言われる投資のほとんどはギャンブルであり、必ず利益を得られるとは限りませんが、時間を投資し、お金ではなく、なりたい自分になるために時間を使うことは確実に返ってくると説明されます。
なりたい自分になるために時間を投資できているか?
この自問自答がとても重要であり、そのために時間を投資できるのであれば、充実した人生につながるのだと思いますし、結果としてお金を稼げるのが理想だという教えなんだと理解しています。
教え⑦:自分ではなく他人の幸せのために動く
・人間は何を探して生きるかという点において、二つに大別される
・ひとつは、自分を幸せにすることを探す人々
・もうひとつは、他人を幸せにすることを探す人々
7人目の賢者からは、他人を幸せにすることの重要性を伝えられます。
友人関係や属する集団は自身と似たような考え方になり、自分の幸せを中心に考えて行動してしまう集団では、自身を幸せにする人は自分しかいませんが、他人を幸せにすることを考えている集団では、自分以外のすべての人が自分を幸せにするために動いてくれるという教えです。
正直、この教えはあまりピンときませんでした。。。
他人を幸せにすることを探せる人は素敵ですし、そうありたいと思いますが、自分が満たされていない状態では難しいですし、他人を幸せにしたいと考えている人が、実際に自分を幸せにしたいと考えるかどうかは別だとも思います。
僕自身の未熟さ故、納得感が低いのかもしれませんが、教えそのものは素晴らしいと思います。
教え⑧:口に出すものだけでなく頭の中で使う言葉を大切に
・人生は、言葉によってつくられている
・その人に起こるすべての出来事は、その人が発したり、心の中で思い描いたりする言葉に起因する当然の結果に過ぎない
8人目の賢者からは言葉の重要性を伝えられます。
これまでの教えは、日々の行動やそこから得られる結果についてのものが中心となっていましたが、それらの行動の出発点は自身が発する言葉や心の中で思い浮かべる言葉が起点となっているという教えです。
これはその通りだと思いますし、思い当たる節が多いです。気分が落ち込んでいる時、物事がうまく進まない時には、自然とネガティブな言葉を思い浮かべたり、発してしまったりするので、悪循環に陥りがちです。
特に、心の中の言葉まで制御するというのは、これから長い時間かけて向き合っていく課題だと感じています。
教え⑨:感謝の気持ちを忘れない
9~11個目の教えは厳密にはサイードの気づきになりますが、本筋と関係ないため、これまでと同じ形で振り返っていきます。
・とにかく感謝の言葉を多く口にする毎日を送らなければならない
・人は誰一人として、一人で生きてゆくことはできない
純粋にすべてに対して感謝を述べることの重要性が伝えられます。
賢者の書を読ませてもらった感謝、自身の至らなさに気づかせてくれた感謝、これらを素直に表現するアレックスから教えられます。
これは僕自身、かなり意識していることでもあります。時には、クレームを言う人が優先され損をするときもありますが、感謝を伝えてお互いが気持ち良い時間を過ごせる経験に勝ることはないと感じます。
教え⑩:もらうのではなく与える気持ちで考える
・人生において欲しいものを手に入れるためには、手に入れたいと思うものを与える側にならなくてはならない
自分が価値を感じているものを、必要とする人にプレゼントする重要性が伝えられます。
賢者の書では、苦労して完成させた賢者の書をアレックスにプレゼントすることで、その意味や重要性に気づかされます。
これは難しいですし、渡し方含めて考え続ける必要があります。単に相手が望んでいるものをプレゼントするというわけではなく、施しをするというものでもないと思います。
その分、考え続けなくてはいけないことであり、その時が来たら惜しげなく渡せるような度量も必要になるのだと思います。
教え⑪:人はいつでも生まれ変わることができる
・人間は何度だって生まれ変わることができる
・昨日までの愚者は、今日、賢者として新しい誕生を迎える可能性を持っている
うだつの上がらない日々を過ごしていたアレックスが、賢者の書を素直な心で読み、視界が開けたことで得られる学びです。
これまで手にしてきたピースは必要なものであり、捨ててきたピースは行動すれば再び手にすることができます。大いなる力はすべての人に備わっている、という本書のテーマに沿った終わりとなっています。
最後は純粋に希望を感じました。常に前向きに挑戦を続け、どのような結末になるか分からないものの、その作業そのものが重要であると教えられた気がしますし、その挑戦はいつ始めても、いつ再開しても遅くはないというメッセージを感じます。
賢者の書の基本情報と映画化について
最後に賢者の書の基本情報を整理しておきます。
- 発刊年・作者・出版社・ページ数
- レビュー
発刊年・作者・出版社・ページ数
発刊年 | 2009年(新装版の前は2005年) |
作者 | 喜多川 泰 |
ページ数 | 224ページ |
出版社 | ディスカヴァー |
賢者の書はAmazonで購入できます。

レビュー
2024年11月17日時点のレビューは次のようになっています。
Amazon:4.5(レビュー数4,170)
ブックライブ:4.3(レビュー数34)
読書メーター:レビュー数572
Xの口コミもいくつか抜粋してみます。全体的に高評価が多いのはもちろん、読みやすい・納得という評価が多い印象です。
賢者の書のあらすじと感想・気づき・見どころまとめ
- あらすじと見どころ
- 14歳の誕生日を迎えた少年が、祖父から「賢者の書」という何も書かれていない不思議な本をプレゼントされる
- この本には、少年の思考や経験が記録され、賢者との対話を通じて、その教えや少年の理解した内容が書き込まれる
- 少年は賢者の書を完成させるために、9人の賢者の話を聞く旅に出る
- もう一人の主人公である男性は、自身を見つめなおすため青年期を過ごした町の公園を訪れる
- 男性は賢者の書を読み、少年の旅を追体験する
- 本書の見どころは、賢者と少年と対話している感覚を味わえること
- 賢者の言葉と少年の成長を追体験できる点も見どころ
- 賢者の教えは深掘りされており、一つの教えに多くのページが割かれているため、多角的な視点から考えることができる
- 主な登場人物
- サイード: 14歳の少年で、素直で前向きな性格。賢者の書を完成させるために旅に出る
- アレックス: 2人の子供と妻を持つサラリーマン。会社での居場所を失い、人生を見つめ直すためにかつて住んでいた町を訪れる
- 9人の賢者: 世界各地に散らばっており、それぞれがパズルのピースのような教えを持っている
- 感想と考察
- 本書は自己啓発本でありながら、モチベーションアップではなく、自分を見つめ直すきっかけを与えてくれる
- 賢者の教えは9つあり、それぞれが深く掘り下げられているため、自分のペースでじっくりと考えることができる
- 「パズルのピース」という設定が秀逸で、教えを納得しやすい形で提示している
- 教えは、結果や行動への考え方、自分や他人との向き合い方、目標への頑張り方、日々の過ごし方、今との向き合い方、という5つのカテゴリーに分類できる
- それぞれの教えは独立しているのではなく、互いに連なり、循環しているように感じられる
- 個人的には他尊心の教えが印象深く、自分だけでなく他者を尊重することが人生を豊かにする鍵となる
- 人はいつでも生まれ変わることができるという希望に満ちたメッセージで締めくくられている
- 基本情報
- 発刊年:2009年(新装版。初版は2005年)
- 作者:喜多川泰
- 出版社:ディスカヴァー
- ページ数:224ページ
- Amazonでの評価:4.5(レビュー数4,170)
- ブックライブでの評価:4.3(レビュー数34)
- 読書メーターでのレビュー数:572