今回は「店長がバカすぎて」を読んだので、あらすじとネタバレ感想をまとめていきます。
前半では、ネタバレなしの簡単なあらすじやみどころ、登場人物などを整理し、後半ではネタバレ全開で詳しいあらすじや感想を書いていきます。
テンポも良く、笑えるシーンもありで面白かったですが、惜しいと感じることもあり、あと一歩という感じでした。
タイトル通り気楽に読める作品ではあるので、クスっと笑える小説が読みたいという人におすすめです。
この記事のポイント
・店長がバカすぎてのあらすじやみどころが分かる
・主要キャラクターが整理されている
・作者や出版時期、大手サイトの評価が知れる
・ネタバレ有の感想を楽しめる
店長がバカすぎてのネタバレなしのあらすじやみどころ
まずは店長がバカすぎてのあらすじなど、基本的な情報をご紹介します。
- 店長がバカすぎてのネタバレなしのあらすじ
- みどころは主人公の普通さ
- 主な登場人物
- 店長がバカすぎての大手サイトの評価
- 作者・発刊年・概要・ページ数
店長がバカすぎてのネタバレなしのあらすじ
関東を中心に6店舗ほど展開している中規模書店である武蔵野書店。
その本店で働く主人公の谷原京子は28歳・独身の派遣社員。本が大好きなこと以外ごく普通の契約社員です。
幼い時の思い出や本好きがきっかけで働くようになったことは遠い昔、今では書店や書店員としての現実を知り、使命もやりがいもなく人並みの責任感で働いています。
そんな彼女がバカだと見限っている店長をはじめ、職場のスタッフや小説家、大手出版社の社員との間で生じるトラブルに巻き込まれ、ドタバタしていきます。
- 職場の人間関係がきっかけで不安と責任感で気持ちが揺れ
- 小説家を招くイベントで肝を冷やし
- 社長のとんでも行動に振り回され
- バイトから大手出版社の正社員になった後輩への嫉妬
- 小説家と出版社とよく分からない会話をし
- 気づけば大きなイベントに巻き込まれ
そんな、どこにでもありそうなお話です。
みどころは主人公の普通さ
スーパー主人公ではないため、華麗に事件を解決することもなければ、劇的に成長することもありません。その分、思考や行動の変化がリアルで物語に夢中になれますし、感情移入しやすい作品です。
発生するトラブルも、働いていれば普通に発生する日常のトラブルがほとんどであり、具体的な情景もイメージしやすく、出てくる人物に対して抱く感情もリアルなものが多いのも魅力です。
1つ1つの話の繋がりは少し薄く感じるかもしれませんが、しっかり繋がっておりそこがリアルに感じるポイントにもなっていると思います。
最後には、伏線に気づかせてくれるような仕掛けもあり、ちょっとした謎もきれいに解消してくれます。
主な登場人物
武蔵野書店のスタッフ
・谷原 京子(たにはら きょうこ)
本作の主人公。大きな使命感があるわけではなく、サボるわけでもない、仕事ができる普通の契約社員という表現が一番しっくりきます。心の中のツッコミにはクスっとさせられることが多いのも魅力です。
・山本 猛(やまもと たける)
バカな店長。名前とは違いごく普通の見た目・雰囲気の店長です。空気を読めず鈍感な性格なのか、すべてを分かった上でそんな雰囲気にしているのか、読めば読むほど分からなくなってきます。
・小柳 真理(こやなぎ まり)
京子が唯一信頼している先輩。キレイで仕事ができて、武蔵野書店の吉祥寺本店で京子が働くきっかけを作った人。
・磯田 真紀子(いそだ まきこ)
京子の後輩のアルバイト。賢く仕事はできるが、性格が少し難しい。ただ、徐々に打ち解けて頼もしいスタッフになる。
・木梨 祐子(きなし ゆうこ)
京子の後輩の学生アルバイト。磯田同様、賢く仕事はでき頼りになる。学生にも関わらずしっかりしている。
・柏木 雄三(かしわぎ ゆうぞう)
武蔵野書店の社長。いわゆるワンマン社長という言葉がピッタリ。
作家
・富田 暁(とみた あかつき)
デビュー作の『空白のエデン』はベストセラー。京子と磯田をつなぐきっかけとなる作家。
・大西 賢也(おおにし けんや)
『早乙女今宵の後日談』などを書く売れっ子。作品冒頭で京子にディスられるが、結末に向けて重要な人物に。
重要な常連客
・藤井 美也子(ふじい みやこ)
吉祥寺本店を利用する常連客。京子がマダムと名付けているセンスの良い女性。なにかと接点がある。
・石野 恵奈子(いしの えなこ)
京子の実家であり、ちょこちょこ飲みに訪れる小料理屋「美晴」を利用する常連客。京子は親近感を覚えることが多い。
店長がバカすぎての大手サイトの評価
2024年11月30日時点のレビューは次のようになっています。
Amazon:4.0(レビュー数775)
ブックライブ:3.9(レビュー数37)
読書メーター:レビュー数3752
Xの口コミもいくつか抜粋してみます。「リアル」や「共感できる」といった声が多いように思います。
作者・発刊年・概要・ページ数
発刊年 | 2019年 |
作者 | 早見 和真 |
ページ数 | 320ページ |
出版社 | 角川春樹事務所 |
店長はバカすぎてはAmazonで購入できます。
公式のXアカウントもあります。
店長がバカすぎてのあらすじとネタバレ感想
ここからはネタバレ有で店長がバカすぎての感想をまとめていきます。
- 店長がバカすぎてのネタバレありの詳しいあらすじ
- 面白いけど。。。という感想
- 続編の「新! 店長がバカすぎて」は2022年に発売済み
店長がバカすぎてのネタバレありの詳しいあらすじ
店長がバカすぎては、次の6篇で構成されているので1つ1つ詳しく見ていきましょう。
第一話 店長がバカすぎて
第二話 小説家がバカすぎて
第三話 弊社の社長がバカすぎて
第四話 営業がバカすぎて
第五話 神様がバカすぎて
最終話 やっぱり私がバカすぎて
第一話「店長がバカすぎて」のあらすじ
二日酔いに苦しみながら、いつものようにバカな店長な話をイライラしながら聞いていると、先輩の小柳からさすがに酷いとおちょくり半分で声をかけられます。
その後、小柳から大事な話があるから夜の予定を聞かれ、半ば強引に飲みに行くことが決まります。おそらく店長昇進だろうと思い、お祝いする気満々でお店に到着すると、退職を告げられます。
その日の昼、店頭に並ぶはずの雑誌がなくなり、磯田とひと悶着あったため悶々としていたこともあり、朝から晩までついていないことばかりの一日になった。
第二話「小説家がバカすぎて」のあらすじ
京子が初めてポップを書いた『空前のエデン』の作家である富田暁のサイン会を実施することになった吉祥寺本店。
2作目以降は微妙な作品が続き、サイン会の目玉となる新書もお世辞にも面白いといえる作品ではなかった。
そんな富田は扱いが難しいことでも知られており、サイン会が開かれる数日前の吉祥寺本店に変装して訪れ、イベントチケットのはけ具合や富田暁のおすすめ本について聞いて回ったりした。
その時のスタッフの対応が悪く、磯田は富田に気づかず接客してしまい、面白くなかった新書ではなく頑なに空前のエデンを進めてしまう。さらに店長に至っては名前すら間違える始末ですっかり気分を害してしまい、サイン会の当日嫌みのような質問を磯田にぶつける。
店長の機転?天然?によってなんとか無事にサイン会は終わることに。
第三話「弊社の社長がバカすぎて」のあらすじ
吉祥寺本店の文芸書部門の売上が悪いことを受け、社長である柏木が吉祥寺本店を訪れる。
過去には吉祥寺本店の文芸書コーナーの一番目立つ場所に雑貨を置く失策を指示した本人であり、それによって文芸書の売上が落ちたことは言うまでもない。
そんな自分を棚に上げてキレる柏木に、谷原京子は毅然とした態度で臨み一触即発のところに店長が割って入り、何とか大問題にはならずにその場は収まる。
その後、酔っぱらった社長が競合店で万引き未遂をして捕まり、店長と競合店の店長が喧嘩し仲良しになるというドタバタ劇があり、どうでもよくなった京子いよいよ本気で退職することを考える。
第四話「営業がバカすぎて」のあらすじ
大手出版社である往来社に新人として入社した木梨祐子。木梨は吉祥寺本店でアルバイトをしていた学生で、富田暁先生がお忍びで店に来たことに気づいた数少ない優秀なスタッフでした。
往来社は武蔵野書店と仲が悪く、その理由は2つ。1つは往来社の営業と昔のスタッフが合わなかったこと。もう1つはレッツゴー奥様という雑誌を自費購入させられること。
そんなこれまでの関係値を改善できるよう頑張ることを目指す木梨と、少し前まで後輩だった木梨が今では収入も社会的ステータスも立場も上になったことに嫉妬してしまう京子は少しギクシャクします。
しかし、京子と働いていたおかげで往来社に就職できたと考えている木梨は、京子が好きそうな本のゲラ(店頭に並ぶ前の本)を無理言って用意し、就職のお礼とゲラの感想を聞くために2人で飲みに行こうと誘います。
そこで二人のわだかまりは解け、苦手意識を持っていた営業はレッツゴー奥様の自費購入に反対している唯一の社員であることも聞き、京子も往来社との関係を考え直します。
第五話「神様がバカすぎて」のあらすじ
ネットで本が買える今の時代、わざわざ書店に通い本を購入してくれる常連を神様というあだ名で呼んでいる京子。(もちろん、崇めるような意味ではなく、ブラックジョークも少し混じっている)
神様は「最近売れている本」など、タイトルや作者も覚えず抽象的な表現で書店員に本のありかを聞いてくるため、書籍に関する知識がものを言い、試されていると考えることで、冷静に対応することができている。
プライベートでは、サイン会で揉めた富田暁先生と食事に行き(なぜか好かれた。おそらく空前のエデンのポップを書いた人と認識したから)、仕事では一話でディスった大西賢也先生からゲラを読んでほしいと指名されるなど、慌ただしい日々を過ごしていた。
最終話「やっぱり私がバカすぎて」のあらすじ
一話から五話のサイドストーリーとして、次の3つの疑問がありました。
・京子が幼いころに通っていた書店の美人店員はだれか
・父の小料理屋「美晴」に通う石野恵美子は何者か
・店長は優秀なのかバカなのか
上2つは五話・最終話で回収されることになり、吉祥寺本店の常連客で京子がマダムと呼んでいる藤井美也子が美人店員であり、大西賢也は石野恵美子でありアナグラムになっていた(Ishino Yemiko → Oonishi Kenya)ことが分かります。
大西賢也はこれまで顔出しなどを一切してこなかったが、店長は知ってか知らずか吉祥寺本店に呼べると信じており、結果的に初の顔出しサイン会を吉祥寺本店で開催し大盛況でイベントが終了します。
面白いけど。。。という感想
一話から振り返ってみましたが、各章のあらすじをまとめていると改めてすごく面白い作品じゃないかと思えてきました。
実際、前半はテンポも良く笑えるシーンもあり、ご都合主義みたいな展開もほとんどないため、夢中になって読んでいました。しかし、中盤から少しずつ違和感が強くなり後半から失速した感が否めず、あと一歩という感じでした。
第一話は作品の世界観やそれぞれのキャラクターがよく分かる、まさに第1章という素晴らしい内容だったと思います。小柳先輩の辞め方や言い方にムッとした気分になるのも分かり、28歳という若さも感じられリアルだな~と思いながら読んでいました。
第二話は店長がひたすらかっこよかったです。富田先生にあえて気づかないふりをしていた、新書がつまらないと分かっており磯田に素直な感想を言わせた、最後はバランスをとる京子にパスを出し面白かったと嘘を言わせて場を収めた、伏線が散りばめられていたため全て納得できて気持ちよかったです。
第三話は少し茶番やご都合主義に感じましたが、京子が無敵の人になっているシーンは容易に想像でき、そこが個人的には山場でした。過去と現在の時系列が分かりづらく、同じように混乱した人が多かったのではないかと思います。
そのせいでのめり込むことができず、ラストの方はご都合主義に感じてしまったのかもしれません。
第四話は木梨さんとの関係が、あまり納得いきませんでした。京子が嫉妬してしまう気持ちも分かりますが、そもそも大手企業であっても新卒の初任給なんて知れてますし、手取りが大きく変わるということもないはずです。
京子が自分の嫉妬心を受け入れるような描写や、木梨さんに悪いと思うような描写がなく、なあなあのまま関係が回復するのはリアルというより、違和感の方が強かったです。
第五話と最終話は話が広がりすぎて、全体を理解するのが少し大変でした。相変わらずシーンが飛び飛びで、テンポが良いというより走りすぎな気がしてしまい、この本のターゲットでついていける人はそこまで多くないのではないかと思います。
また、店長と竹丸トモヤの件はやりすぎに感じました。たまたまなのか、本当に店長のペンネームなのかは分かりませんが、自分の本を持ち歩く付箋を貼るというのは、あまり現実的ではない気がします。
良かったところも当然あり、一話で京子が批判していた「早乙女今宵の後日談」の種明かしと大西賢也(石野恵奈子)のペンネームの作りが同じだったことには本当に驚きました。これに気づいた時は、感嘆するってこんな感じかもと思ったことを覚えています。
続編の「新! 店長がバカすぎて」は2022年に発売済み
2022年の8月に続編である「新! 店長がバカすぎて」も発売されています。
物語の中も現実世界と同じだけ進んでおり「三年ぶりに店長が帰ってくる!」というシーンから始まります。
なんだかんだ言って面白かったとは思うので、近いうちにこちらも読んでみようと思います。
店長がバカすぎてのネタバレと総括:おすすめ度★★★☆☆
物語の大筋の印象としては面白く、今回改めて整理した各話の概要を見ると面白い本だとも思いました。
しかし、しっかり読んでいくと感想にも記載したように、少し話が飛びすぎていたり、散らかりすぎた印象で、最後までのめり込み続けられなかったのは残念でした。
エンタメ小説や大衆文学みたいなジャンルが好きな人にはおすすめですが、そういったジャンルは気楽に読めることも大事なので、少し混乱してしまう本作は手放しにお勧めできるものではありませんでした。
続編に期待します。