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ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人のネタバレ・感想・あらすじ~ミステリー初心者におすすめ~

「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」のあらすじやネタバレ有の感想などをまとめました。

始めて挑戦した長編ミステリーでしたがとても面白く、同じように長編ミステリーに挑戦してみたい方には特におすすめです。

どこにでもあるような小さな観光地で起きた殺人事件と、町を盛り上げるために企画された町おこしプロジェクトが絡み合い、最初から最後まで楽しむことができます。

この記事のポイント
・ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人のあらすじが分かる
・見どころや登場人物が整理されている
・ネタバレ有の感想を楽しめる
・最後の考察や続編について知れる

目次

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人のネタバレなしのあらすじと見どころ

  • あらすじ
  • みどころ
  • 登場人物とそれぞれの関係性
  • レビュー
  • 発刊年・作者・出版社・ページ数

あらすじ

観光地として少しだけ有名な町。

そのため、活気に溢れた町というほどではなく、主人公の同級生たちは町おこしに必死になっています。同級生の一人から有名作家が生まれ、町をモチーフにした描写もあることから、その作品を用いた町おこし計画を進めていました。

そんな中コロナが世界を襲い、進めていた町おこし計画は頓挫、観光地でもあった町は大打撃を受けてしまいます。

主人公は東京で働いておりそうした事情に疎い状況でしたが、父が殺害されてしまい地元に帰省したことで物語が動き始めます。

殺人事件の真相究明と、以前とは別のプランで作品を使った町おこしをしたい同級生たちの物語が並行して進み、散りばめられた伏線がキレイに回収されていきます。

ブラック・ショーマンとは主人公の叔父であり、アメリカで活躍していた一流の元マジシャンです。姪っ子である主人公を上手く使いながら?事件解決に向けて動いていきます

頭の回転が速く、マジシャンの技術を活かした鮮やかな方法で事件を解決していく一方、金にシビアで口が上手く、息を吐くように嘘をつく人物でもあります。

みどころ

なんといっても叔父(ブラック・ショーマン)の鮮やかな推理や適当な言動です。

実際にいたら仲良くなりたいとは思いませんが、傍から見ている分には面白くとても愉快な人物です。推理に必要な情報収集のほぼ全てをマジシャン時代に培った技術を使っているため、しっかりと説得力もありご都合主義に感じる展開もほとんどありません。

また、長編の推理小説ならではの人物描写や物語の進行速度が魅力でした。

物語の進展があまりない部分の描写が長く感じられるという声もありますが、作中で経過する約1週間が長いようで短く感じられるため、主人公の心境と重なる部分があり個人的には好きでした。

話の長さと物語上の重要度が一致しないものが多いため、悪く言うとメリハリがないのですが「あれはどういう事だろう?」「ということは○○なのか?」と考えているうちに新しい要素が出てくるため、物事が複雑に絡まり合い物語を面白くしていたと思います。

殺人事件や町おこしとは直接関係ないサイドストーリーのような話も並行するため、最後までわくわくや謎を楽しめました。

登場人物と相関図

主人公の身内

・神尾真世
建築会社で働く主人公。結婚式の準備を進めつつ、同窓会に参加するかどうかを悩んでいたところ、父であり同窓会メンバーの担任でもあった父が殺害され、帰省することに。

・神尾英一
主人公の父であり、殺害された被害者。以前は中学教師として勤めており、生徒からも慕われていた。

・神尾武史
主人公の叔父であり、殺害された被害者の弟。アメリカでマジシャンとして活躍していたが、現在はバーを経営している。マジシャンとして培った技術と地頭の良さで犯人を絞り込む。

・中条健太
主人公の婚約者で、建築会社勤務。婚約者であるものの、主人公とは微妙な空気が流れている。

主人公の同級生

・針宮克樹
マンガ「幻脳ラビリンス」の作者で、町おこしの中心となる人物。のび太と形容されることがあり、中学時代はいじめのターゲットになることも。

・九重梨々香
大手広告代理店に勤務。釘宮が「幻脳ラビリンス」をヒットさせた後、同じ中学出身という事もあり、マネージャーとして動くようになる。しずかちゃんと形容されることあるが、容姿に対してであり、性格は結構異なる。

・柏木広大
地元の建築会社の副社長で、「幻脳ラビリンス」を利用して町おこし計画の中心人物。ジャイアンと形容されることがあり、雰囲気もジャイアンに近しい。

・牧原悟
地方銀行の行員。存在感があるわけではないが、お金関係の話には必ずかかわってくるため、印象には残る。スネ夫と形容され、柏木(ジャイアン)と一緒にいることも多い。

・杉下快斗
東京でIT企業を経営しており、同窓会のために帰省中。エリート杉下や出木杉君と形容されるが、嫌みを含んだ表現であることも多い。

・津久見直也
中学時代に白血病となり他界。釘宮の親友であり、学生時代は主人公に好意を寄せており相思相愛に近いしい関係。正義感が強く、同級生の中で最もリーダーシップが強かった人物。

・原口浩平
酒屋を営んでいる事件の第一発見者。思ったよりも登場回数が多くない。

・沼川伸介
居酒屋を経営している。居酒屋で一堂に会すシーンが印象的だが、あまり登場することはない。

・本間桃子(池永桃子)
今は少し疎遠になっているが主人公の親友であり、同窓会に誘ってくるためおそらく最初に登場する同級生。葬儀の受付係を担当するなど、主人公を支える。

警察

・木暮
県警本部の警部あり、キツネ顔が特徴。主人公やその叔父とやり合うシーンが多く、嫌われる刑事役。

・柿谷
地元の刑事課の係長あり、殺害された被害者の教え子。主人公に親身なるシーンが多く、好かれる刑事役。

その他主要登場人物

・池永良輔
桃子の夫であり、被害者の教え子。同級生中心の物語と思いきや、意外と登場シーンが多い。

・森脇敦美
被害者の教え子であり、有名な実業家の娘。町おこしプロジェクトに多額の支援金を出した父が他界したことで、巻き込まれるかたちに。

レビュー

2024年11月4日時点のレビューは次のようになっています。

Amazon:4.2(レビュー数443)
読書メーター:レビュー数622

Xの口コミもいくつか抜粋してみますが、高評価が多い印象です。

発刊年・作者・出版社・ページ数

発刊年2020年
作者東野 圭吾
ページ数444ページ
出版社光文社

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人はAmazonで購入できます。

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人
出典:Amazon

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人のネタバレありの感想

  • ネタバレ
  • 感想
  • 真世と健太(主人公と婚約者)のその後について
  • 映画化と続編

ネタバレ

本作では殺人事件を中心に複数のストーリーが同時並行で進みます。これが悪く言うと冗長に感じる理由になりますが、本当に謎解きをしているような感覚になり、個人的にはかなり魅力的でした。

まず殺人事件の犯人ですが、釘宮君でその理由は知られたくない理由を知られたからというありきたりなものでした。

「幻脳ラビリンス」は中学時代の親友で亡くなってしまった津久見が原案であり、物語の大筋は津久見が中学生の時に作成しており、釘宮はそれに沿ってマンガを描いていました。

殺害された英一は作文を書かせるのが好きで、その中で「幻脳ラビリンス」の原案となる話を提出しており、それを思い出し釘宮に話をしたことで殺害されてしまいます。

桃子と良輔(親友とその旦那)の夫婦喧嘩や柏木と牧(ジャイアンとスネ夫)を中心として起こっていたお金周りのトラブル、九重と杉下(しずかちゃんと出木杉)の不倫など、ミスリードになる事実が明るみになっていく中、釘宮(のび太)が犯人だと確定したシーンでは何とも言えない気分になりました。

真世と健太が最後どうなったかは感想の後に考察してみます。

感想

長編ミステリーというのを初めて読んだのですが、初めてがこの作品でよかったと強く思っています。話の内容も分かりやすく文章表現も易しいものが多かったため、あまり苦になることなく読み進められました。

殺人事件の犯人を捜す過程で、関係者の知られたくない秘密が明るみになっていく過程はおもしろく、実際の事件の調査でもこうしたことはよくあるんだろうなと考えてしまいました。

肝心の殺人事件のしっかりしており、改めて振り返ってみると勘のいい人は真相に辿り着けたと思うので、ミステリーとしてもよくできていたんだと思います。

ただ、学生時代の具体的なエピソードは描かれないものの、おそらくあまり良い思い出がなかったであろう釘宮は幸せになってほしいなと思いながら読み進めていたため、犯人だと分かったときは、ショックを受けつつもやっぱりなという思いもありました。

「これまでとは作風が大きく変わり大ヒットした」といういかにもな話はミスリードであってほしいと思っていましたが、それ以外の人物がより怪しく描かれているため、感覚的に釘宮が犯人かもしれないと思っていたのかもしれません。

改めて犯行動機について考えてみると、冷静になれば英一は決して物分かりが悪いわけではないため「出来心で原案をパクってしまい後に引けなくなった」と正直に伝えていれば公にすることはなく、胸の奥にしまっておいてくれるはずで事件も起きなかったのではないかと思います。

しかし、釘宮としては絶対にバレたくない秘密であり、いつかバレるかもしれないという不安を常に抱えていたわけで、たとえその相手が恩師であっても冷静な判断はできず、衝動的に事件を起こしてしまうのも理解できます(鉢合わせするまでは殺人でなく作文の放火を考えていましたし)。

真世と健太(主人公と婚約者)のその後について

健太が浮気をした(もしくは真世と付き合う前に付き合っていた)女性との間で起こした中絶トラブルが、ある日真世にメールで送られてきます。

そのことでモヤモヤした疑心暗鬼のような状況になってしまい、本人に聞くこともできずギクシャクした関係になってしまっていましたが、事件が解決した後に武史(叔父)が2人で話し合う場を設けたところで物語は幕を閉じます。

物語の本筋ではほとんど触れられず、本編にどう絡んでくるのか気になりながら読んでいたため「ここで終わるのか」という思いと「自由に想像できるいい終わりかもしれない」という思いが半々という感じでした。

個人的には、2人の関係を壊そうとした第三者による嫌がらせ説が濃厚だと思います。おそらく、健太に惚れており別れさせたいと思っている誰かが犯人です。

前提として浮気だったかどうかですが、これはおそらくないと思います。メールの中でも以前付き合っていたという旨の記載があり、浮気をするような人物であれば武史が気づき許さないのではないかと思います。

それでは、以前付き合っていた女性と中絶トラブルを起こしたかどうかを考えていきましょう。結論をいえば、こちらも可能性として低い気がします。

まず、健太と武史が2人きりになっていろいろと話した際、健太は女性の好みや過去の恋愛について武史の話術にハマってペラペラとなんでも話してしまいます。その結果、武史には次のように評されます。

「彼は真面目で正直な男だ。それは間違いない」
「問題は、過ぎたるは及ばざるがごとし、ということだな」

また、真世自身は健太のことをお人好しと評していることから、正直な人物であることは間違いないと思います。

そのため、武史のいっている「過ぎたるは及ばざるがごとし」は、正直すぎる部分のことであり、話術にハマりすぎてしまった(騙されやすい性格の)ことを、姪の結婚相手として不安に感じてしまったのだと思います。

次に、メールに記載されている健太の行動を見てみましょう。

妊娠したことを知らされた健太は険しい顔つきで次のように答えます。

「今、子供を作るのはまずいよ」

そして避妊をせずに行為をしたことを責めると謝ることしかせず、

「お金は出すから今回は堕ろしてほしい」

と伝えています。その際、次にできた時には結婚して産もうと約束しますが、それ以降は避妊を徹底するようになり、別れるに至ったようです。

武史が話した印象とメールに記載されている行動を考えると、メールの内容が嘘であり中絶トラブルはなかったと思っています。

理由は大きく2つあります。

1つ目(こちらが根拠の大半ですが)は、健太が簡単に騙されるような人物であり、嘘をつくのが下手だと考えられるからです。

メールに記載されている健太は女遊びがひどく、それっぽいことをその場で言えるようなタイプにみえます。つまり、口が上手く要領の良い人物のようです。

しかし、武史や真世とのやり取りを見ている限り不器用で正直者に感じられるため、人物像が全くあいません。

2つ目は、武史が話し合いの場を設けたからです。

おそらく武史は、真世と会う前に健太とも話をしているはずです。その後に、真世がモヤモヤしているメールを読み、予定通り2人に話し合いの場を提供したという事は、武史的には白の可能性が高いと判断したのではないでしょうか?

英一の件からも分かるようにお金にシビアな面があったとしても、姪である真世を悲しませるようなことは絶対にしないと思えるため、メールのようなことをする可能性があると判断した場合は、話し合いはさせずに別れさせるように動いたはずです。

映画化と続編

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人は映画化が決まっており、続編はすでにリリース済みです。

まず映画化ですが、福山雅治さんと有村架純さんを主演として2025年に公開される予定です。福山さんが叔父の武史、有村さんが真世を演じるようですが、イメージマッチしているため、今から楽しみです。

特に、武史のひょうひょうとした感じを福山さんがどのように演じられるのか気になります。

次に続編ですが「ブラック・ショーマンと覚醒する女たち」という短編ものが2024年の1月に発売されています。

名もなき町の殺人では長編ものでしたが、覚醒する女たちでは6つの話が収録されています。まだ読んでいないので分かりませんが、もしかすると真世と健太のことも触れられているかもしれません。

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人のネタバレと総括:おすすめ度★★★★★

「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」はとてもおすすめです。特に、僕のように初めて長編のミステリーを読もうと考えている人にはぜひ読んでみていただきたいです。

評価を見てみると手放しでほめているものばかりではなく、星3つや4つのものも一定数あり、万人にお勧めできる一冊ではないのかもしれません。

その分、他の作品へのハードルを上げることもないはずで、他にも本を読んでみようという気にさせてくれるはずです。

もちろん、僕的には星5つで続編も購入予定ですので、ぜひ手に取ってみてください。

ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人
出典:Amazon
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この記事を書いた人

僕が気になって読んだ・見た作品のあらすじや感想をネタバレ有で紹介していきます。完全なインドア派で、暇があればいろんな作品を見たり読んだりしています。

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