本を守ろうとする猫の話のネタバレ感想をまとめました。
僕的にはおすすめ度は満点の★5つで「本を読んでみたい」というすべての方におすすめですので、気になっている方にはぜひ読んでいただきたい一冊になっています。
祖父を亡くした高校生とトラネコの不思議な出会いから始まるファンタジー要素強めの本ですが、読書について考えさせられる話が多く「本を読みたい」と強く思わせてくれます。
読書になれていない初心者でも読みやすい優しい文体で、読書家でも楽しめるオマージュが散りばめられた(僕は読書家でないのでオマージュには気づけませんでしたw)作品で、その人の読書量によって楽しみ方が変わる本になっているようです。
少なくとも、読書量が少ない僕は楽しむことができました。
この記事のポイント
・本を守ろうとする猫の話のあらすじが分かる
・見どころや登場人物、明言を知ることができる
・作者や発刊年などの基本情報が整理されている
・ネタバレ有の感想を楽しめる
本を守ろうとする猫の話のあらすじと見どころ
まずは本を守ろうとする猫の話のあらすじや見どころ、登場人物などの基本情報をみていきましょう。
- あらすじ
- みどころ
- 登場人物
- レビュー
- 発刊年・作者・出版社・ページ数
あらすじ
本を守ろうとする猫の話は、おじいさんを亡くした高校生がトラネコと冒険をする物語です。
おじいさんと二人暮らしだった主人公は、自宅兼おじいさんの職場である小さな本屋さんで、一緒に本を読むことが大好きでした。しかし、突然おじいさんが亡くなってしまい、面識のない伯母に引き取られることになります。
頭の整理が終わらない中、ある日しゃべるトラネコが目の前に現れ「本を救うのを手伝ってほしい」と依頼され物語が始まります。
”本を読んだ数”のように、いつの間にか本そのものの価値をないがしろにしてしまった敵と、本の魅力について主人公が舌戦を繰り広げることで本を守っていきます。
みどころ
一番のみどころは、主人公とボスの舌戦です。
本や読書について改めて気づかされることや考えさせられる対話が多く、読めば読むほど本が好きになっていく感覚がありました。
僕自身、主人公が戦ったようなボスと近しい考え方で本を読み漁っていた時期があり(ビジネス書ですが。。。)、自分が言語化できなかった何かが違うという感覚を主人公が言語化してくれた時は、ものすごくハッとしました。
僕のようにビジネス書以外ほとんど本を読んでこなかった人間でも十分楽しむことができましたが、様々な作品のオマージュが入っているようで読書家の人も楽しめる作品になっています。(あとがきでも触れられていたので知りました)
その人の読書量によって、楽しみ方や面白さの種類が変わる作品になっていると思います。
登場人物
夏木林太郎
夏木林太郎はこの本の主人公です。
読書が好きでお店の本を全て把握していること以外は、ごく普通の高校一年生です。冒険を通して、次第に逞しくなっていき次第に頼もしさを感じるようになります。
トラネコ
全ての冒険はトラネコから始まります。
堂々としており、少し意地悪な部分もありと、憎めないキャラクターです。その正体を考えながら読んでいると、世界観により引き込まれるかもしれません。
その他
1つ年上で本好きということ以外は林太郎と正反対の秋葉良太。
幼馴染で学級委員長の柚木沙耶。
レビュー
2024年10月31日時点のレビューは次のようになっています。
Amazonn:4.3(レビュー数124)
ブックライブ:4.0(レビュー数33)
読書メーター:レビュー数2093
Xのレビューもいくつか抜粋してみます。
発刊年・作者・出版社・ページ数
発刊年 | 2017年 |
作者 | 夏川 草介 |
ページ数 | 224ページ |
出版社 | 小学館 |
本を守ろうとする猫の話は、下記Amazonのページから購入することができます。
本を守ろうとする猫の話のあらすじとネタバレ
それでは、僕なりに「本を守ろうとする猫の話」の感想をネタバレなどを含めながら語っていきたいと思います。
- 名言
- ネタバレ
- 感想
- トラネコの正体
名言
この本は考えさせられるセリフが多く出てきますが、特にお気に入りの2つのシーンから明言をご紹介します。
まずは、1人目のボスと対峙している時に林太郎が思い出した祖父の言葉です。
「たくさんの本を読むことはよい。けれども勘違いしてはいけないことがある」
「本には大きな力がある。けれどもそれは、あくまで本の力であって、お前の力ではない」
「ただがむしゃらに本を読めば、その分だけ見える世界が広がるわけではない。どれほど多くの知識を詰め込んでも、お前が自分の頭で考え、自分の足で歩かなければ、すべては空虚な借り物でしかないのだよ」
ビジネス書ですが、僕自身がむしゃらに本を読んでいた時期があり、この言葉はとても印象に残っています。今はビジネス書以外も読むようになり、また本と向き合う時間が増えましたが、読んだものをいかに昇華させていくかが大事だと強く感じます。
もう1つは、最終章で林太郎が幼馴染の柚木沙耶に言ったセリフです。
「読んで難しいと感じたなら、それは柚木にとって新しいことが書いてあるから難しいんだ。難しい本に出会ったならそれはチャンスだよ」
「読みやすいってことは、それは柚木にとって知っていることが書いてあるから読みやすいんだ。難しいってことは新しいことが書いてある証拠だよ」
難しいことが書いてある本はついつい敬遠しがちですが、新しい価値観や知識を得ようと思うと避けては通れないものだと思います。僕はそういった難しい本を避け続けた結果、本がつまらないものと感じてしまった時期があり、今ではとても後悔しています。
この言葉は、いつもとは違うタイプの本を手に取る多くの人にとって励みになるものだと思います。
ネタバレ
ここからは本を守ろうとする猫の話のネタバレをしていきます。
ネタバレになるため登場人物では記載できませんでしたが、対峙する敵は全部で4人います。本書では迷宮は全てで3つあるという前提で話が進み、第4の迷宮についてはラスボスのような敵と戦うのか、主人公の成長やトラネコとの話になるのか分からない形になっています。
第1の迷宮:閉じ込める者
第2の迷宮:切りきざむ者
第3の迷宮:売りさばく者
最後の迷宮:本に宿る心(仮題)
最後の迷宮の本に宿る心は僕が勝手に命名したものですが、この4名と対話を重ねていく物語です。すべてのボスは本当にそう思っているわけではなく、本が大好きで愛するがゆえに考えが歪んでしまった人たちです。
閉じ込める者
閉じ込める者では、本は読んだ量が何よりも大切であり、どれだけ大量の本を読んだかがその人の価値を決めると考えているボスと対話していきます。
一度読んだ本を振り返ることはせず、ただ量を求めているボスに対して主人公の林太郎は、本と向き合うことの大切さを説いていきます。
切りきざむ者
切りきざむ者では、忙しくて本を読む暇がない現代人に、本の重要な要素を抽出しその魅力を多くの人に届けたいと考えているボスと対話していきます。
本の要約こそが本の生き残る道であり、多くの魅力的な作品を世に残すことができると持論を展開するボスに対して、通しで読むことで得られる体験があり、速読や要約でその機会を奪ってはいけないと説いていきます。
売りさばく者
売りさばく者では、本は売れることが全てであり、その中身はどうでも良いと考えているボスと対話していきます。
本の中身の良し悪しは関係ないと語るボスに対して、本を売ることは大切だが本を通して人々に伝えたい何かがあるはずで、本を売る人間はその想いを忘れてはならない。ただの金稼ぎの道具にしてはならないと説いていきます。
最後の迷宮
最後の迷宮では、長年読まれ続けてきた名著が擬人化しています。本には読んだ人の想いが宿っていき、それは「思いを込めて本を読んだ人の数×読まれた年月」によって大きくなっていきます。
しかし、本を手に取る人は時代とともに少なくなり、本を大切にし思いを込めて読む人はより少なくなっています。
そんな時代の変化に、本の力に疑問や哀しさを感じたボスと、本の力とは何か価値は何かを説いていきます。
感想
本を守ろうとする猫の話を振り返ってみると、本に対して僕らが思っている/扱ってしまっている問題点を改めて考えさせられる内容になっています。
読書量だけを追いかけ、要約された動画の音声を聞き、知識を得た気分になり満足してしまう。売れている本や話題の本ばかりを追いかけ、昔からある名作にはなかなか手がでない。本の上辺だけをすくい取り、分かった気になり効率よく活用しようとする。
このように僕自身、思い当たることばかりであり、そうしたコンテンツが人気である理由を考えると同じような人も多いのではないでしょうか?
本書ではこうした風潮に対して、本が大好きな主人公とライバルが言葉を交わすことで問題提起するだけでなく「やっぱり本って素敵だよね」と思わせてくれる作品です。
僕のように少し本から遠ざかっていた人はもちろん、読書なんかほとんどしたことがないという方にもぜひ読んでいただきたいです。きっとすぐに新しい本を読みたくなったり、改めて1ページ目から読み直してみようという気になるはずです。
読書が好きで名著も一通り読んでいるという人にとっては、作中に散りばめられたオマージュを楽しめるみたいですので、これまでの読書量に応じて楽しみ方が変わる本ともいえるみたいです。
トラネコの正体
感想の最後に、トラネコについても触れてみたいと思います。
最初はベタにおじいさん(主人公の祖父)がトラネコになって表れたのだと思っていたのですが、会話の内容やトラネコの雰囲気から違うのかもしれないと思うようになりました。
どちらでも捉えられる表現が多いため、読書家であればトラネコの元ネタが分かり正体まで辿り着けるのかもしれませんが、僕はそうした知識が全くないため本書を読んだ感想としてまとめていきます。
最後の迷宮に向かう道中で林太郎が「昔読んだ絵本に出てきたような気がする。」と思いだすようなシーンがあります。そのまま受け取ると、ラスボスと同じように絵本に宿った心がトラネコになっていると考えることができます。
ただ、僕としてはそうではなく「祖父の死という失意の中で、今まで本と向き合い続けてきた林太郎自身が生み出した、自身の分身のような存在」ではないか?と思っています。
本を大切にし真剣に向き合ってきた林太郎だからこそ、迷宮のある世界から自身に満ち溢れた林太郎がトラネコの姿で現れたのではないかと思うようになりました。
本を守ろうとする猫の話のあらすじと総括:おすすめ度★★★★★
本を守ろうとする猫の話は、本が好きになる・本を読みたくなる不思議な物語で、僕のおすすめ度としては文句なしの5点満点です。
ちょうど読書を再開し、これまで読んでいた本とは違うものに挑戦し始めた時に読んだというのもあると思いますが、刺さる言葉ややり取りが多く夢中になって読むことができました。
本を読んでみたいという思いになったことがある人にはお勧めですので、ぜひ手に取ってみてください。