表紙とタイトルのインパクトからつい手に取った「成瀬は天下を取りに行く」のあらすじと、ネタバレありの感想をまとめました。
まずは、ネタバレなしで成瀬は天下を取りに行くのあらすじやみどころ、作者などをご紹介し、後半からはネタバレ有で詳しいあらすじを記載したあと、感想をまとめています。
有名&人気作ですので「面白い」「面白くない」と評価が分かれており、僕自身「盛り上がりに欠ける」という印象でしたが、読んで損はない作品だとは思いました。
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公開日:2024年9月23日
更新日:2024年12月1日
この記事のみどころ
・ネタバレなしであらすじやみどころが分かる
・主要な登場人物や本の基本情報がわかる
・有名サイトの評価がしれる
・ネタバレ有のあらすじや感想が読める
成瀬は天下を取りに行くのあらすじとみどころ
まずは、ネタバレなしで成瀬は天下を取りに行くのあらすじやみどころ、登場人物といった基本情報を見ていきましょう。
- 簡単な本書の構成
- ネタバレなしのあらすじ
- みどころは奇抜な成瀬の行動とリアリティ
- 成瀬は天下を取りに行くの主な登場人物
- 作者や出版社について
簡単な本書の構成
成瀬あかりが中学2年生の時、閉店を迎える西武大津店に毎日通うところから物語が始まります。しかし、そこから少しずつ成長していく姿が描かれるわけでなく、中学2年生~高校3年生まで成瀬の短編物語が一冊にまとまっている感じです。
具体的には次の6編で構成されています。
- ありがとう西武大津店
- 膳所から来ました
- 階段は走らない
- 線がつながる
- レッツゴーミシガン
- ときめき江州音頭
「ありがとう西武大津店」「膳所から来ました」「ときめき江州音頭」の3篇は成瀬あかりを中心とした物語となっており、成瀬が中学2年生の時と高校3年生の時の物語となっています(ときめき江州音頭が高3時)。この3篇は幼馴染の島崎の視点を中心に話が進んでいき、成瀬の人となりや魅力が描かれています。
「階段は走らない」では成瀬は出てこず、西武大津店が閉店することをきっかけに動き出すサイドストーリーのようなもので、ときめき江州音頭とつながっています。
「線がつながる」「レッツゴーミシガン」は高校1年生と2年生の時の成瀬の話ですが、他の3篇とは距離間の違う2人の視点で描かれており、成瀬あかりの解像度を高める役割となっていました。
ネタバレなしのあらすじ
成瀬は天下を取りに行くは、全6篇の短編小説をまとめたものになるので、各章のストーリーを簡単に見ていきましょう。
「ありがとう西武大津店」は、閉店が決まった西武大津店に成瀬が毎日通う物語です。
西武大津店が閉店するまでの約1ヵ月、ローカルテレビの「ぐるりんワイド」という番組でお店の様子が毎日放送されることになり、成瀬あかりは西武ライオンズのユニフォームを着て毎日映り込むことにします。友達の島崎みゆきも合流し、時には2人で映り込みます。
「膳所から来ました」は、成瀬と島崎がM-1を目指す物語です。ゼゼカラというコンビを結成し、二人でネタを考え中学校の文化祭やM-1の予選会でネタを披露します。
「階段は走らない」は、サイドストーリー的な物語です。西武大津店の閉店を知った稲枝敬太は、久しぶりに地元に帰り西武大津店を見にいくことに。旧友で地元にいる吉嶺マサルと大津店を訪れ同級生に会うと、小学校の頃に音信不通になったタクローと会うために、同窓会を企画します。
「線がつながる」は、高校1年生になった成瀬あかりを見る、大貫かえでの視点で物語が進みます。大貫は成瀬と同じ中学でその時から苦手意識がありました。部活見学やオープンキャンパスで出会うたびに不必要に意識してしまいます。
「レッツゴーミシガン」は、かるたの全国大会に出場する高校2年生の成瀬あかりに一目ぼれした、西浦航一郎の視点で物語が進みます。
成瀬の地元で開催された全国大会だったため、琵琶湖の観光船ミシガンを成瀬が案内することになり、デートという意識のない成瀬とデートだと意識している西浦の掛け合いが楽しめます。
「ときめき江州音頭」は、高校3年生の成瀬と島崎がゼゼカラとして地元の夏祭りの総合司会を担当する物語です。高校1年生の時から3年連続の抜擢であり、高校3年生らしい進路と今後の葛藤が見られます。
みどころは奇抜な成瀬の行動とリアリティ
成瀬が大きなことを成すのでは?という期待を持って読み進めるのではなく、誰もが一度はア想像し辞めてしまうようなことに実際に挑む成瀬を見て、その過程を楽しむことが本作のみどころになっています。
主人公の成瀬あかりは、少しというよりだいぶ変わった女の子であり、自分という芯を強く持っています。本気で200歳まで生きると信じて行動するような突飛さと、自分の意志でなんでも行動に移せる強さがあり、そこが本作の一番の魅力といえるでしょう。
一方で、フィクションの王道展開といえるような物語が大きく広がっていくようなことはありません。そこは、ある意味リアルといえるかもしれません。
成瀬は天下を取りに行くの主な登場人物
・成瀬 あかり(なるせ あかり)
本作の主人公。中学2年生、高校1年生、高校2年生、高校3年生の時の成瀬が本作では描かれます。大それたことを公言して、そのうち1つでも実現できればすごいこと。という想いでやりたいことにどんどん挑戦している。
・島崎 みゆき(しまざき みゆき)
成瀬の幼馴染。同じマンションに引っ越してきたこときっかけに仲良しになり、他の同級生が成瀬を変な目で見る中、成瀬を認めており成瀬がなすことを見届けるのが自分の使命だと思っている。
・大貫 かえで(おおぬき かえで)
もともと成瀬と同じ中学にいたが、本編に登場するのは膳所高校1年生の時。クラスのカーストで最下層を自認している。自分を持っている成瀬をなんとなく嫌っている。
・西浦 航一郎(にしうら こういちろう)
広島・錦木高校の男子高生。全国高校かるた大会で出会った成瀬に心惹かれる。友人の中橋 結希人(なかはし ゆきと)のお節介もあり、成瀬とデートすることに。
・稲枝 敬太(いなえ けいた)
大阪のWeb制作会社に勤務。西武大津店の閉店を知り帰郷。吉嶺と連絡を取り、同窓会を開催したり、町内会の夏祭りイベントを手伝ったりする。
・吉嶺 マサル(よしみね マサル)
ときめき坂にある吉嶺マサル法律事務所代表。地元に残り法律事務所を開業していることもあり、地元に対する愛情が強い。夏祭りの実行委員も担っており、リーダーシップのある人物。
作者や出版社について
発刊年 | 2023年 |
作者 | 宮島 未奈 |
ページ数 | 208ページ |
出版社 | 新潮社 |
成瀬は天下を取りに行くはAmazonで購入できます。
成瀬は天下を取りに行くのあらすじとネタバレ感想
- ネタバレありの詳しいあらすじ
- 感想は可もなく不可もないが誰が見ても楽しめる作品
- 面白くないという評価について
ネタバレありの詳しいあらすじ
改めて、成瀬は天下を取りに行くは次の6編から構成されています。
- ありがとう西武大津店
- 膳所から来ました
- 階段は走らない
- 線がつながる
- レッツゴーミシガン
- ときめき江州音頭
「ありがとう西武大津店」「膳所から来ました」「ときめき江州音頭」の3篇は成瀬あかりを中心とした物語となっており、成瀬が中学2年生の時と高校3年生の時の物語となっています(ときめき江州音頭が高3時)。この3篇は幼馴染の島崎の視点を中心に話が進んでいき、成瀬の人となりや魅力が描かれています。
「階段は走らない」では成瀬は出てこず、西武大津店が閉店することをきっかけに動き出すサイドストーリーのようなもので、ときめき江州音頭とつながっています。
「線がつながる」「レッツゴーミシガン」は高校1年生と2年生の時の成瀬の話ですが、他の3篇とは距離間の違う2人の視点で描かれており、成瀬あかりの解像度を高める役割となっていました。
それでは、詳しく見ていきましょう。
ありがとう西武大津店
成瀬あかりが中学2年生の時、西武大津店の閉店が決まります。町にとっては衝撃的で大きなニュースであったことから、地元のテレビ局が毎日その日の西武大津店の様子をニュース枠で放送することに。
それを知った成瀬は、これまでの感謝を伝えるために西武ライオンズのユニフォームや帽子をかぶり毎日西武大津店を訪れ、テレビ番組に映ることを決意します。
最後まで大きくバズるようなことはなかったものの、登場人物たちには確かに響くものがあり物語の重要なキーにもなったため、決して無駄ものではありませんでした。
膳所から来ました
西武大津店が閉店した後、成瀬はM-1に出場することを決め幼馴染の島崎を誘います。
最初は否定する島崎でしたが成瀬の熱量や母の予想外の援護射撃から、一緒にM-1に出ることを決めます。
膳所(ぜぜ)は2人が住んでいる町の地名で、読み方が難しいことから「ゼゼから来ました」→「ゼゼカラ」というコンビ名にきまり、文化祭とM-1で漫才を披露することになりました。
結果は、文化祭ではボチボチうけて、M-1は1回戦で敗退するというリアルな感じで終わりました。
漫才ができていく過程は素人目にも面白くなっていることが分かり、文化祭のトラブルでボケとツッコミが入れ替わるなど、過程の部分が印象的でした。
階段は走らない
地元の祭りを仕切っている吉嶺や稲枝を中心としたサイドストーリー的な物語です。
この時点では西武大津店にたくさんの思い出がある1つのグループという扱いでしたが、その後のときめき江州音頭で地域のために精力的に活動をしている人物であることが分かります。
そんな吉嶺が友人と一緒に、西武大津店の閉店を機に同窓会を開くことを決めます。小学校時代の同級生と久しぶりに会いたいという思いもありましたが、それ以上に喧嘩別れのようになってしまった同級生タクローと再会したいという思いが強くありました。
連絡先が分からない同級生も多くいたため、Web制作会社に勤めている稲枝が同窓会用のページを作成し、SNSでの呼びかけと連携できるような仕組みを構築したことで、連絡先が分からない人でも同窓会に参加できるようになりました。
最終的にタクローとも会うことができ、大人の視点で友人との関係性の重要さや脆さを伝える話となっていました。
線がつながる
県内の進学校で高校1年生になった成瀬あかりを、中学時代にあまり仲の良くなかったものの同じ高校になった同級生の大貫かえでの視点で描かれます。
いきなり坊主姿で登場した成瀬あかりが、競技かるた部に入り、大学のオープンキャンパスに表れます。その時々で遭遇する大貫は、本当は魅力に感じている部分があるものの、嫌悪感が勝ってしまい態度に出てしまう、学生らしい葛藤を楽しむことができます。
苦手な感じを出せれていることに気づきながら意に介さない成瀬や、大貫といつも一緒にいる友達が惰性で一緒にいるだけと感じてしまうなど、リアルな思春期のあるあるを見ながら成瀬あかりの特異さを楽しめます。
レッツゴーミシガン
高校2年生の時、競技かるた部で全国大会に出場していた成瀬あかりに一目ぼれした男子高校生と、観光船ミシガンに乗ってデートをする話です。
男の子が勇気を出して声をかけたり、友人がそれを手助けしたり、ちょっとした事件に巻き込まれたりといろいろ起こりますが、この話は現実離れ感を強く感じてしまい、ストーリーそのものはあまり印象に残っていません。
ただ、線がつながるでは浮いている存在と捉えられる描写が多くあった成瀬ですが、レッツゴーミシガンではとても魅力的に感じることができ、クラスの中にいる成瀬と客観的にみた高校2年生の女の子だと、抱く印象は全く異なる点はリアルに感じました。
ときめき江州音頭
高校3年生になった成瀬あかりが、幼馴染の島崎と一緒に江州音頭という町のお祭りの司会をする物語です。
ゼゼカラの存在を知った主催者にお願いされ毎年司会をしていたのですが、今年で最後かもしれないという漠然とした不安を持っていた成瀬を中心に話が進んでいきます。
これまでは、成瀬が周りを巻き込んでいく側であり大人びて見える部分も多かったですが、コミュニケーションがあまり得意でないことが裏目に出てしまい、勝手にゼゼカラが解散すると結論付け空回りしていきます。
最終的には大学の進路は大きく違うものの、大学生になってもゼゼカラとしてお祭りの司会をすることになり、ハッピーエンドで物語は終わります。
感想は可もなく不可もないが誰が見ても楽しめる作品
それでは、「成瀬は天下を取りに行く」の感想をまとめていきます。
あらすじや自分なりの評価、感想を整理してきましたが、よく言えばだれでも楽しめる作品ですが、悪く言えば中途半端な作品だった印象です。
「天下を取りに行く」という表現に目をつむれば全体を通してよくまとまっていますし、成瀬あかりという人物は十分に魅力的ですが、やはり名前負けな感じは否めませんでした。
小中学生~大人まで幅広い年齢層の方が楽しめる本だと思いますが、僕自身があまりハマらなかった理由は大きく2つありますので、詳しく記載していきます。
①.タイトルとのギャップが大きい
やはり僕としては「天下」が何を指すかはともかくとして、成瀬あかりなりの天下を取りに行く形で物語が終わってほしかったですし、この不完全燃焼感の最大の原因はタイトルにあると思っています。
最後まで読み終わって思ったことは、成瀬あかりは普通の人がやらない数多くの経験を有言実行していくことで「本当にすごいことを成しえるかもしれない」という期待感にも満たない雰囲気だけがある人だったなという感想でした。
例えば、何も成し遂げられないことの無力感やなんでもそれなりにこなせてしまう器用貧乏さ、熱中すべきものを探しているような葛藤など、実際に何もできなくてもこういった表現があればタイトルとのギャップも感じなかったと思いますし、成瀬あかりに対して共感できる部分もあったかもしれません。
しかし本作にはそういった描写はなく、淡々としすぎているため「何をやってもうまくいかないんだろうな」というあきらめに近い感情が先に出てきてしまいます。
このような形であれば、せめて「熱中すべきものを探している途中」のような表現や心理描写は欲しかったです。そうすると、たくさんの経験を積むことでやりたいことが見つかり、ちょっとやそっと上手くいかない程度ではあきらめないような人物になっていく期待感を持てたかもしれません。
少なくとも本作の成瀬あかりには、何かできるような印象は持ちませんでした。
②.成瀬あかりの人物像が明確になっただけ
成瀬あかりには、どんなものであれ挑戦できる条件が揃っているのであれば、後先考えず進むことができる強さがあり、勉強も運動も人並み以上にでき、他人のアドバイスを受け入れられる素直さもあります。
一方で、見切りの早さや自分の感情を正しく伝えられない点はマイナス面に見えました。
こうした印象は「ありがとう西武大津店」「膳所から来ました」の2編で十分に持つことができましたが、その後の4編ではその肉付けがされたようなイメージが強く、結局何がしたかったのか分からなくなってしまいました。
成瀬あかりの年齢を考えると「こうやって成長していくよな」という感想で物語が終わってしまうのも良いですが、最後に希望の光のようなものが見えた方が、やはり気持ちの良い読後感を味わうことができると思います。
しかし本作では、掲げた目標に対して最大限のパフォーマンスを発揮するための努力や熱量を感じることがなく、それなりの努力や結果で満足してしまっているため、成長したと感じられる要素もなく「ここからどうなるのか?」という中途半端な感じで終わってしまいます。
面白くないという評価について
成瀬は天下を取りに行くの感想を調べると「面白くない」というキーワードが関連で表示されますが、個人的には半分賛成で半分反対です。
本屋大賞をとった作品や面白い作品に違いないという視点で読み進めてしまうと、面白くないという感想を持っても仕方ないかなと思います。
理由としてはこれまで話してきた通りですが、成瀬あかりの特別感が弱く何がしたかったのかよく分からない点やこれから物語が始まるような期待感だけで終わってしまった点が挙げられます。
一方で、1つ1つの物語は丁寧に作られていますし、全体を通したまとまりや伏線回収のようなものもきちんとされていくため、一定の満足感や納得感は得られるはずです。
成瀬は天下を取りに行くのあらすじと総括:おすすめ度★★★☆☆
改めてあらすじを振り返ってきましたが、やはり大きな盛り上がりに欠けると感じたため、おすすめ度は星3つです。
1篇1篇は面白く読み進めることができますが、成瀬あかりという人物の解像度が高まったところで物語が終わるため、どうしても不完全燃焼感がありました。
また、成瀬あかりについても確かに魅力的ではありますが、ものすごく特別で今後の成長を見届けていきたいと思えるほどではなく、どちらかというと自分を貫き通せる強さを持った普通の人という印象が強かったです。
そのため、続編を見たい欲もそこまで強くならず、おすすめ度も星3つという感じです。
逆に言うと、ご都合主義的な物語の進み方はあまりしないため、そういうのが好きな人にはぜひ読んでいただきたいです。